ノンアルコールビールは「凍りやすい」
——0.00%だから起きる、冷蔵庫の小さな事件
「冷蔵庫に入れておいたノンアルコールビールが凍って、缶が破裂していた」。SNSで時折話題になるこの現象、実は科学的に正しい話です。今まで普通のビールでは一度も起きなかったのに、ノンアルコールビールに替えた途端に起きた——その理由は、ノンアルコールビールの”純粋さ”にあります。
ビールが凍らないのは、アルコールのおかげ
水は0℃で凍りますが、水に何かが溶けていると、凍る温度は0℃より低くなります。理科の授業で習った「凝固点降下」です。
アルコール度数5%前後のビールの場合、この効果で凍り始める温度はおよそマイナス2〜3℃。家庭用冷蔵庫の冷蔵室は通常0〜5℃程度に保たれているので、ビールはまず凍りません。私たちが当たり前に享受してきた「冷蔵庫でビールは凍らない」は、実はアルコールが働いていた結果なのです。
ノンアルコールビールは、水にとても近い
一方、アルコール0.00%のノンアルコールビールは、組成が水にぐっと近づきます。凍り始める温度も0℃前後。つまり、冷蔵庫の中で「局所的に0℃を下回る場所」に置かれると、凍ってしまう可能性があるのです。
液体は凍ると体積が増えます。缶の中で凍結が進むと内側から圧力がかかり、缶がふくらみ、最悪の場合は破裂します。「ビールでは起きなかったことが、ノンアルコールビールでは起きる」——不思議に見えて、理屈はとてもシンプルです。
冷蔵庫の「危険地帯」
冷蔵室全体の設定温度が2〜3℃でも、庫内の温度は一様ではありません。特に注意したいのが、次の2か所です。
❄️ 冷気の吹き出し口の近く
冷気が直接当たる場所は、瞬間的に0℃を下回ることがあります。
❄️ チルド室
もともと0℃付近を保つよう設計された部屋なので、凍結の一歩手前の環境です。
メーカー各社も公式に「0℃以下になる場所での保管は避けてください」と注意喚起しています。ノンアルコールビールは、吹き出し口から離れた棚の中央あたりが定位置と覚えておくと安心です。
もし凍ってしまったら
慌てて温めるのは禁物です。急激な温度変化は缶への負担になりますし、風味も損なわれます。常温に置いて、ゆっくり解凍するのが基本です。なお、一度凍ると炭酸が抜けたり、液が分離して本来の味わいが戻らないことがあります。缶が変形している場合は、開栓時に中身が噴き出すおそれがあるため、無理せず処分することをおすすめします。
お店・施設のみなさまへ——「キンキン」の正解
ノンアルコールビールを提供いただいている飲食店やサウナ施設のみなさまにも、ひとつだけ。「キンキンに冷やそう」と冷凍庫に入れる方法は、ノンアルコールビールでは破裂のリスクがあります。おすすめはクーラーボックスに氷水。氷水は0℃より下がらないので、凍らせる心配なく、いちばんおいしい温度まで冷やせます。
凍りやすさは、まっすぐさの証
凍りやすいのは、余計なものに頼らず、水に近い澄んだ組成でつくられているから——そう考えると、この小さな弱点も、ノンアルコールビールの素顔のひとつに思えてきます。正しく冷やして、いちばんおいしい一杯を。
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