ノンアルコールビールを飲んだ時、 「アルコール0.00%なのに、なぜこんなにもビールらしい味わいなのだろう?」 と不思議に思ったことはありませんか?
現在のノンアルコールビールは、単に麦汁に炭酸を加えただけの飲料ではありません。
ビールらしい香りや苦味、コク、飲みごたえを再現するために、食品工学・発酵技術・香気制御など、さまざまな技術が使われています。
今回は、一般社団法人 日本ノンアルコールビール協会(JNABA)が、少しマニアックな「製法と科学」の視点から、その秘密をご紹介します。
ノンアルコールビールの製法は大きく2系統
ノンアルコールビールの製法にはさまざまな種類がありますが、代表的な考え方としては、大きく次の2系統に分類されます。
① 発酵制御系(発酵抑制系)
アルコール発酵をできるだけ抑えながら、ビールらしい風味を作る方法。
② 脱アルコール系
一度ビールを醸造した後、アルコール成分を取り除く方法。
どちらが優れているという単純な話ではなく、メーカーごとに目指す味や設計思想が異なります。
近年は、特殊酵母や発酵制御技術の進化によって、発酵制御系でも非常に本格的な味わいの商品が増えています。一方で、脱アルコール系は「実際にビールを造ってからアルコールを除去する」という特性上、よりビールに近い香味設計を行いやすいと言われています。
「脱アルコール」はどうやって行うのか?
では、一度完成したビールから、どのようにアルコールだけを取り除くのでしょうか。
ここで活用される代表的な技術のひとつが、 減圧蒸留(真空蒸留) と呼ばれる方法です。
通常、アルコールは約78℃前後で沸騰します。
しかし、ビールを高温まで加熱すると、ホップの香り成分が失われたり、熱による風味変化が起きたりする可能性があります。
そこで、装置内部の圧力を下げることで、より低い温度でもアルコールを蒸発しやすくする技術が使われます。
山の上ではお湯が低温で沸騰するのと同じ原理です。
気圧を下げることで、ビールへの熱ダメージをできるだけ抑えながら、アルコールを除去しやすくしているのです。
香りを守るための「香気制御技術」
ただし、アルコールを除去する工程では、ビールらしい香り成分(揮発性成分)も一部失われやすくなります。
そのため、一部のメーカーでは、 香気成分を回収・調整する技術(アロマリカバリー等) が採用されています。
これは、蒸発工程で失われやすい香りをできるだけ保持・調整し、ビールらしい風味バランスを再現しようとするものです。
また近年では、膜分離技術(逆浸透膜など)を活用する研究・実用化も進んでおり、ノンアルコールビールの品質は年々向上しています。
「ノンアルは薄い」は、もう過去の話かもしれない
かつてのノンアルコールビールには、 「麦茶っぽい」「ビール感が弱い」 というイメージを持つ方も少なくありませんでした。
しかし現在は、発酵技術・ホップ設計・香気制御・脱アルコール技術の進化によって、味わいの幅は大きく広がっています。
ピルスナー風、IPA風、白ビール風、黒ビール風など、クラフトビール的な方向性を持つ商品も増えており、「好みで選ぶ」時代に入ってきています。
まとめ:ノンアルコールビールは「技術」の飲み物でもある
私たちが何気なく飲んでいる0.00%の一杯の裏側には、発酵学・食品工学・香気分析など、さまざまな技術者たちの試行錯誤があります。
「アルコールが入っていない代用品」ではなく、 独自の進化を遂げた飲料ジャンル として見ると、ノンアルコールビールの世界はさらに面白く感じられるかもしれません。
次にグラスを傾ける時は、ぜひその一杯に詰まった“科学と技術”にも思いを馳せてみてください。
参考文献・参考資料
-
Journal of the Institute of Brewing
「Production methods for alcohol-free and low-alcohol beer」 -
MBAA Technical Quarterly
ノンアルコールビール製造技術に関する技術資料 -
Brewers Association
Beer Style Guidelines / Brewing Process -
Barth-Haas Group
ホップ香気成分に関する技術資料 - アサヒビール・キリンビール・サントリー 各社公開資料
- Reverse Osmosis and Membrane Separation Technologies in Brewing Industry
※ ノンアルコールビールの製法はメーカー・商品によって異なります。本記事は代表的な技術概念を一般向けに解説したものです。
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