1月をお酒なしで過ごす「ドライ・ジャニュアリー」とは ― 始まりと、分かっていること

1月をお酒なしで過ごす「ドライ・ジャニュアリー」とは ― 始まりと、分かっていること

1月をお酒なしで過ごす
「ドライ・ジャニュアリー」とは
― 始まりと、分かっていること

年が明けるころ、海外の記事やSNSで「Dry January」という言葉を見かけることがあります。直訳すれば「乾いた1月」。1月のひと月を、お酒を飲まずに過ごしてみる、という取り組みです。

日本でも少しずつ知られてきましたが、「いつ、誰が、なぜ始めたのか」「実際のところ何か変わるのか」までは、あまり伝わっていないように思います。今回はそこを、できるだけ確かな資料にあたって整理してみます。

【結論】
・2013年にイギリスの団体が始めた取り組みで、ひとりの女性の個人的な思いつきがきっかけでした
・登録者は初年の4,000人から、近年は20万人規模に
・参加者を追った調査では、半年後も飲む日が減っていたという報告があります。しかも1月を最後まで続けられなかった人にも、同じ傾向が見られました
・ただし参加する人にはもともと偏りがあり、誰にでも当てはまる話とは言えません
※ 本記事は海外の取り組みの紹介です。お酒を飲むこと自体を否定するものではありません。
※ 20歳以上の方に向けた内容です。

始まりは、ひとりのランナーでした

2011年、エミリー・ロビンソンさんという女性が、初めてのハーフマラソンに申し込みます。大会は2月。練習を楽にしたくて、1月はお酒を控えてみることにしました。体重が減り、よく眠れ、体力がついた気がしたそうです。

翌2012年、彼女はアルコール問題に取り組む団体(現在の Alcohol Change UK)に加わります。その年もまた1月にお酒を休んでいたところ、同僚たちが「それ、どうだった?」と次々に聞いてきた。ひとりの習慣が、まわりの関心を集めた——そこから、みんなでやってみる企画が生まれました。

そして2013年1月、キャンペーンとして正式に始まります。参加登録した人は4,000人でした。

※ 「Dry January®」は Alcohol Change UK の登録商標です。当協会が主催・運営しているものではなく、ここではあくまで海外の取り組みとしてご紹介しています。

4,000人から、20万人へ

その後の登録者数は、主催団体の記録によると次のように増えていきました。

  • 2013年:4,000人
  • 2020年:10万人以上
  • 2023年:17万5,000人
  • 2024年:21万5,000人
  • 2025年:20万人

ここで気をつけたいのは、この数字は「登録した人」の数だということです。登録せずに自分ひとりで取り組む人のほうが、はるかに多いと考えられています。研究報告では、登録しないまま1月の禁酒を試みる人が400万人以上と推計されていました。

ニュースでは「イギリス人の3分の1が参加」といった大きな数字を見かけることもありますが、そちらは世論調査で「やるつもり」と答えた人の割合です。登録者数とは別のものさしなので、並べて語らないほうが正確です。

半年後に、何が起きていたか

主催団体は、サセックス大学の研究者に参加者の追跡調査を依頼しています。2018年の参加者を対象にした報告では、登録時・1月末・その半年後の3回、アンケートが行われました。

半年後の時点で、次のような変化が報告されています。

  • お酒を飲む日が、週4.3日 → 3.3日に
  • 酔うまで飲む回数が、月3.4回 → 2.1回に

興味深いのは、この変化が「1月を最後まで飲まずに過ごせたかどうかに関係なく」見られたという点です。途中で飲んでしまった人にも、同じ方向の変化がありました。また、お酒を断る自信の度合いも上がっており、その伸びはもともとよく飲んでいた人ほど大きかったと報告されています。

「2月にその反動でたくさん飲むのでは」という指摘についても、主催団体は別の研究を挙げて、そうした揺り戻しは見られないとしています。

やってみませんか

ここまでの数字は、自分から申し込んだ人たちを調べたものです。やる気のある人が集まっていますから、誰にでも同じことが起きるとは言えません。それでも「まるひと月やり切らなくても意味があるらしい」というのは、ずいぶん気楽でいい話だと思います。

それに、1月である必要もありません。ドライ・ジャニュアリーが1月なのは、イギリスでクリスマスから新年にかけて飲む機会が続くからです。日本なら、新年会が終わったあとでも、健康診断の前でも構いません。ひと月と決めず、1週間でも、平日だけでも。

お酒を休んでみるとき、いちばん困るのはたいてい「席」のほうです。乾杯のタイミング、手持ち無沙汰、何度目かの「飲まないの?」。ノンアルコールビールは、そこにもう一つの選択肢を置いてくれます。同じグラスを持って、同じ乾杯に加われる。

次にお酒を休む日があったら、一本試してみませんか。飲まない時間を、もっと自由に、もっと楽しく。

【参考文献・出典】
  • Alcohol Change UK「The Dry January® story」― 2011年のエミリー・ロビンソン氏の個人的な取り組み、2012年の入職、2013年のキャンペーン開始と登録者4,000人、その後の登録者数(2020年10万人超/2023年17万5,000人/2024年21万5,000人/2025年20万人)。「Dry January®」は同団体の登録商標
    alcoholchange.org.uk
  • de Visser, R. & Lockwood, N.「Evaluation of Dry January 2018」University of Sussex, School of Psychology, October 2018 ― 登録時2,821人/1か月後1,715人/半年後816人が回答。飲酒日数 週4.3日→3.3日、飲酒日1日あたりの量 8.6ユニット→7.1ユニット、酔う頻度 月3.4回→2.1回(いずれも半年後、1月を完走したか否かにかかわらず)。飲酒拒否の自己効力感(DRSE)が有意に上昇し、その伸びはAUDIT得点が高い人ほど大きい。標本は一般人口より社会経済的地位が高く、世帯所得の中央値は4万〜5万ポンド(一般人口は3万ポンド未満)、44%が過去の参加経験あり、42%が危険な水準の飲酒。半年後の回答者は非回答者より高年齢・大学教育が多く・AUDIT得点が低いため、データは重み付け済み
    報告書(PDF)
  • Alcohol Change UK「The evidence behind the Dry January® challenge」― いわゆる「Binge February(2月の反動の飲酒)」は起きないとして de Visser et al. (2016) を挙げている
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